愛知県豊田市 | 医療法人Well-being だいせい歯科医院

コラム

仮歯について


こんにちは。豊田市にあります、だいせい歯科医院です。

今回は『仮歯』についてご説明します。

『そもそも仮歯って何ですか?』や『仮歯はいつまで使うのですか』など様々なご質問を受けることがありますので、ご説明します。

仮歯って何ですか?

 仮歯とは読んで字のごとく仮の歯になります。虫歯を削ってそのままにしておくと咬むことができません。神経が生きている歯であれば冷たいもの温かいものがしみてしまいます。歯の神経(歯髄といいます)を保護する目的で使われています。また神経がない歯(失活歯とか無髄歯ともいいます)でも削りっぱなしにしておくとプラークや唾液に汚染されてしまいます。それらから保護する目的で使用します。

 仮歯には正確には2つの概念から【temporary restoration】と【provisional restoration】に分けられます。

①Temporary restoration

テンプラリーレストレーション、通称『テック』と言っています。先に述べたように一時的にかぶせるものを言います。あくまでも一時的なものなので歯の形を模したりしておらず、最終補綴物(かぶせ物)のように細心の注意を必要としないものになります。「とりあえずしみないように」とか「とりあえず汚れないようにする」とか「とりあえず咬めるように」などが目的になります。

②Provisional restoration

プロビショナル レストレーション、通称『プロビ』と言っています。①のテックとは違い最終的な咬み合わせや歯の形を決定するための仮のかぶせ物です。将来作成されるFinal restoration (ファイナル レストレーション:最終補綴物)がより良い条件で装着されるための環境を提供する準備として用います。プロビが外れてしまったり、壊れてしまったりしないか、咬み合わせや、形は調和がとれているかを細かく評価して、最終的なかぶせ物へと移行していきます。ですから、テックと違いプロビの使用は長期にわたります。

仮歯の役割

 仮歯には二つのカテゴリーがあることをご説明しました。

 はじめに少し触れましたが『テック』はとりあえず咬めるようにするためであったり、とりあえずしみないようにしておくなど、次にかぶせ物ができてくるまでの間に使用されるものでごく短期的使用を目的としています。

一方『プロビ』は最終補綴物を良い状態で使用できるような環境を整備するために使用します。1歯から全顎的(ほとんどすべての歯をかぶせなおしたりする場合わたり作成されます。1歯の場合でも全体の歯とのかみ合わせの調和がとれているか、歯磨きしやすい形で清潔に保つことができるか、はずれたり壊れたりしていないかをチェックしていきます。また歯髄がちゃんと保護できているか(しみていないか)や、歯の不用意な傾斜や移動を防いだりします。

全顎的な場合も同様にかみ合わせが正しく機能しているか、壊れたりしていないかなど細かく診査していきます。全顎的な治療が必要な場合は『治療咬合』をプロビに与えることにより一時的に咬みにくい時期が出ることがあります。例えば『低位咬合』(:かみ合わせが低いと診断された場合)は咬み合わせを上げてプロビを作製します。このような場合は新しくなった咬み合わせになれた状態で再度プロビを作り直します。これを『セカンドプロビ』といいます。セカンドプロビでも何度か調整を行い、咬み合わせにもなれ、ブラッシングの状態も良くなり、歯肉も引き締まって環境がほぼ整ったら、もう一回プロビを作製します。これを『サードプロビ又はファイナルプロビ』といいます。このサードプロビを最終補綴物に置き換えていきます。こうして歯にも歯肉にも調和のとれたかぶせ物ができあがります。

最初のテック、一回目のプロビ、セカンド、サードと続きますので、最終的なかぶせ物が装着されるまでには3か月~1年ぐらいかかることもあります。抜歯をしてブリッジにする場合や歯周外科を行った歯やインプラントの上部構造などの場合は周囲組織(歯肉は骨)が治癒し安定するまでは最終補綴物は装着ができません。

審美領域(前歯)の場合は歯の形や位置はもちろんのこと、顔や唇との調和がとれているかもとても大事です。(審美性の回復)患者さん自身にプロビがはまっている状態を見てもらい、歯の形に対する希望や改善点などを確認するという重要な役割もあります。

またこれは自由診療で行われることで、削ってすぐにかぶせるという保険診療ではここまで行うことはできません。テックまでとなります。なぜならプロビでいくら精度を上げても、保険のかぶせ物は残念ながらそこまで精度が高くなく、そもそも削った歯との適合がそれほど良くないので、セメントで隙間を埋めてくっつけるからです。プロビでせっかく作った形もかみ合わせも再現ができないのです。

仮歯の時に注意してほしいこと

仮歯の時はガムやおもちのような粘りが強く、くっつきやすいものは食べないでください。

仮歯は治療の時に外すことができるように完全にくっつけることはしません。『仮着』といい、接着力が弱いセメントで装着します。ガムやキャラメル、おもちなどはくっいてとれてしまう事があるので食べるのをやめてください。

硬いものを食べないでください。

仮歯は樹脂製(レジンといいます)なので強度があまりありません。氷や硬いおせんべいなどを咬んで割れてしまう事があります。

強くかみしめるのはやめてください。

で説明したように仮歯は強度があまりありません。ビーフジャーキーやフランスパンなどのように強くかみしめるようなものは食べるのを控えてください。ブリッジの仮歯の場合はねじれたように破損してしまう事があります。また土台の歯を痛めてしまう事があります。最悪の場合、歯根が折れてしまい抜歯に至ることがあります。

壊れても捨てないでください。

壊れてしまう原因を調べる必要がある為、割れてしまっても、捨ててしまったり、無くさないようにしてください。

外れてしまった仮歯を自分でくっつけないでください。

  外れてしまった仮歯をご自身でくっつけて来院される方がたまにいらっしゃいます。ホームセンターや文房具店で売られている瞬間接着剤などで接着してしまうと仮歯の内面が変形してしまいます。

また歯科用ではないので歯の神経が生きている有髄歯の場合は神経にダメージを与えてしまう可能性があります。また神経のない歯でも歯科用でない仮着材では土台を痛めてしまう事があります。取れてしまった場合は面倒でも歯科医院に連絡をし、再着してもらうようにしましょう。

 このように仮歯の間は壊れてしまったり、外れてしまったり、咬みにくいなどの事が起こります。壊れたり取れてしまった場合は通院中の歯科医院医必ず連絡をしてください。

まとめ

  ひとくちに仮歯といっても、『テンポラリーレストレーション』(テック)と『プロビショナルレストレーション』(プロビ)では目的が違います。前者は一時的なもの、後者は最終補綴物(かぶせ物)をより良い条件で装着されるための環境を準備するもの。

  また前者は保険治療でも行うことがありますが、後者は自由診療になります。

  仮歯の間は食べるものに気を付けて、外れたり、壊れたりしたら、通院中の歯科医院に連絡をして下さい。壊れてしまっても捨てずに保管して次回の受診の時に渡すようにしましょう。