愛知県豊田市 | 医療法人Well-being だいせい歯科医院

コラム

入れ歯ついて


こんにちは。豊田市にあります、だいせい歯科医院です。

今回もご質問をよく頂きます、『入れ歯』についてご説明させていただきます。

❶入れ歯の歴史

 みなさんは入れ歯はどのぐらい前から使われていたかご存じでしょうか?『日本歯科医師会』によりますと、現存している日本の最古の入れ歯は、和歌山県和歌山市の願成寺を開山した中岡テイ、通称❝仏姫❞と呼ばれる尼僧のものだったそうです。1538年(天文7年)に76歳で亡くなられているので、すでにこの時代には入れ歯が使われていたことがわかります。もちろん現在のようなセラミックスやプラスチックなどで人工歯を作ることができませんのでツゲの木が使用されていました。最初は仏師がツゲの木を彫刻して木の入れ歯を作っていましたが、江戸時代には「入れ歯師」と呼ばれる職人が生まれました。

この木の入れ歯は明治時代まで作られていたそうです。ツゲの木は緻密で硬く、抗菌作用があり不潔になりにくいので入れ歯の材料としては最適でした。

現在のようなシリコンなどの印象材(型を取る材料)がない時代には蜜蠟に松やになどを混ぜて作った印象材?で型を取りその方に合わせて入れ歯師が彫り上げていくという、まさに職人にしかなしえない独自の木彫刻だったそうです。(参照:歯の博物館)

入れ歯に使用する材料や技術は、はるかに進化していますが、500年近く前の入れ歯と現在の入れ歯は形はとても良く似ています。これを手彫りで作っていたなんて驚くばかりです。

❷入れ歯の種類

 それでは現在の入れ歯についてご説明します。大きく分けると保険の入れ歯と自由診療(自費)の入れ歯に分けられます。保険の入れ歯は主にプラスチック製です。プラスチック製の入れ歯は軽いのですが上あごを覆ってしまう部分が食べ物の温度を感じにくくしてしまうので、温かい食べものや冷たい飲み物など食感が悪いので食事がおいしく感じないといわれる方も少なくありません。また割れにくくするために厚くなることがあるので異物感が強く感じられるかもしれません。

↓保険の入れ歯                ↓自由診療の入れ歯

部分入れ歯でも保険の入れ歯と自費の入れ歯では大きく変わります。保険の入れ歯は【たわみ】が大きいため残存歯(ばねをかける歯)に大きな負担をかけてしまいます。やがてグラグラして抜けてしまう事もあります。自由診療(自費)の入れ歯は残存歯を守るような設計をします。もちろん使用している材料もすべてが異なります。また種類も豊富にあります。

ここでは豊富な種類の自由診療(自費)の入れ歯について代表的なものをお話していきたいと思います。

金属床

金属床は床の部分が薄くできるので異物感が少ない、熱伝導性が高いので食事がおいしく感じられます。(冷たいもの、熱いものの感覚を損ねない)

金属を使うことで強度が増したわまないので残存歯にも負担をかけにくくなります。

インプラントオーバーデンチャー

インプラントを数本埋入し、マグネットや特殊な維持装置(アタッチメント)をインプラントに取り付けて義歯の沈み込みを抑えることができます。金属床と合わせて作ります。インプラントがしっかりと骨の中で固定されるため義歯が外れたりずれることはほとんどありません。すべての歯がなくなってしまい義歯が安定しない方や部分入れ歯で後方に歯がなく入れ歯を入れると痛くて使えなかった方には画期的な義歯です。

シリコーン義歯

金属床と合わせて作成することで義歯がのる土手の部分、歯茎の当たる部分にシリコーンを入れることで装着時や咬んだ時に痛みが出にくい義歯です。

歯ぐきの部分がごつごつしている方(骨隆起がある方)は外科的に骨隆起を削り取る必要があるのですが、シリコーンを使用することでこの手術が必要なくなることがほとんどです。また骨が薄くなってしまった方にも義歯がしっかり歯茎に合うため痛みが出ることがありません。

❸入れ歯ができるまで

 入れ歯ができる工程について大まかにお話ししたいと思います。

  1. まずは今ある入れ歯で噛めるように調整をします。初めての入れ歯の方は自由診療の場合は仮義歯を作製します。
  2. シリコーンで精密な型を取りかみ合わせの基礎になるもの(咬合床)を作ります。咬合床は咬んでもらう部分にワックスが焼き付けてあり熱を加え軟化させて口腔内に装着して咬んでもらいます。この咬合床で入れ歯の高さや唇の張りなどを取っていきます。
  3. 咬合床でできたかみ合わせの部分に今度は人工歯を入れて口腔内に装着して最終チェックを行いますこれを試適といいます。試適の段階でかみ合わせの高さや顔全体のバランスをチェックします。ここでずれがあれば②に戻ります。
  4. 義歯が完成してきます。ここで再度かみ合わせの確認をするために「リマウント」を行い咬み合わせのチェックを口腔外で行います。修正が必要な場合はここで行います。

リマウントとは義歯を入れた状態でかみ合わせを取りそれを咬合器という装置にセットして調整を行うことです。(リマウントを実践している歯科医院はまだまだ少ないです)※解説1

リマウントから戻ってきた義歯を口腔内に装着して実際に使用してもらいます。

装着直後は少し違和感があったり咬みなれないなどが出ることがあるのでいきなり歯ごたえのあるものは控えてください。

しばらく使用してもらい痛みがないか、義歯の内面に隙間がないかなどを確認します。

この時『フードテスト』を行い実際に食べた時に痛くないかずれないかなどをチェックします。必要であればお預かりして調整をおこないます。

フードテストとは患者様に実際に食べたいもの(当医院では実際におにぎりやおせんべい、リンゴ、唐揚げなどをお持ちにご来院くださいます)

一般的には歯医者さんに行くと赤い紙や青い紙を先生が「カチカチ咬んでください」とか「ギリギリ歯ぎしりしてください」とか言われてかみ合わせを見てもらったことがあると思います。この赤い紙、青い紙を【咬合紙】といいます。咬合紙を咬んでもらうことにより印記されて部分を調整していくのですが、義歯の場合はこの咬合紙だけでの調整は非常に難しいです。実際に食べ物を食べてもらい飲み込むまでをチェックする必要があると考えています。まだフードテストを行っている歯科医院は少ないですが今後増えていくのではないでしょうか。(保険の入れ歯では行うことはありません。)

❹入れ歯が合わない、痛いときの対処法

 新しく入れ歯を作ったけど、どうも合っていないような感じがする場合や痛みがある場合は、歯科医院に行き調整をしてもらいましょう。古い入れ歯の形に歯ぐきが変形している場合は新しい入れ歯に歯ぐきが合うのにはしばらく時間がかかります。また咬んで痛い場合や装着するだけで痛い場合など痛みがどのような時に出るのかでも調整の仕方が変ります。決して自分で削ったり、バネを曲げたりしないでください。古い入れ歯は応急的に使用したり、新しい入れ歯の修理や調整でお預かりすることがあるので、捨てずにきれいにして保管してください。保管の際は義歯ケースなどに水を入れて乾燥させないように保管するのが良いです。(義歯は乾燥すると割れやすくなります)

❺まとめ

 歯を抜けたままにしておくと、空いた場所に両隣の歯が倒れこみ、本来のかみ合わせが維持できなくなるためさらに歯を失うことになります。

 保険以外の選択肢を広げれば入れ歯はもっと快適になります。

 入れ歯の調整は自分では行わず、かならず歯科医院で行いましょう。

 解説:咬合器に装着すると咬合接触しているところが少なく、(赤い点)これでは咬めません。

 解説:咬合器上でかみ合わせを調整し咬合接触点をしっかり作ることができましした。(赤い点、青い点)この後フードテストを行い調整前と調整後の食べやすさ、飲み込みやすさをチェックします。