歯周病について
こんにちは。豊田市にあります、だいせい歯科医院です。
今日は『歯周病』についてご説明したいと思います。ご存じの方も多いと思いますが『歯周病』と聞いてピンと来ない方は『歯槽膿漏』の方が聴きなじみがあるかもしれません。
日本では歯を失う原因の1位が『歯周病』という調査報告があります。
(2018年8020推進財団)
目次
❶歯周病って何
ズバリ歯周病は感染症です。
歯周病や歯槽膿漏という名前は聞いたことがあるけど実際はどんなものなのかご存じない方もいらっしゃると思います。
歯周病は痛くなくゆっくりとほとんど自覚症状もなく進行する歯周病菌により引き起こされる怖い病気です。歯を支える歯ぐきと骨(歯槽骨といいます)が細菌によって破壊され、ひどい場合には歯がぐらぐらになって抜けてしまいます。
歯周病菌が血管内に入り血流にのって全身に運ばれ糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などの全身疾患を悪化させることが近年の研究で明らかになりました。
❷歯周病の始まりから終わりまで
歯周病は細菌(歯周病菌)によっておこる感染症です。
①歯肉炎
歯と歯ぐきの境目(歯肉溝といいます)に入り込んだ歯周病菌がまず歯ぐきに感染します。歯肉溝の深さは2~3㎜ぐらいです。
感染した部分は炎症を起こし赤く腫れ、ブラッシング時などに出血をすることがありますが、ごくわずかでほとんど自覚症状がなく痛くもありません。
「あれ?歯磨きしたら血が出たな。磨きすぎて傷でもついたかな?」ぐらいの感覚でしょうか?
②軽度歯周炎
炎症が進行して骨が溶けはじめます。歯肉溝は歯槽骨の一部が溶けた歯周ポケットになります。
【4mmぐらいまで進行】
歯ぐきはさらに赤く腫れ触ると少しブヨブヨしてきます。出血もしやすくなります。でもまだこの時点では大きな変化はありません。
見た目は歯肉炎がちょっと進んだかなと思うぐらいでしょうか?痛くはありません。
③中等度歯周炎
さらに炎症が進行し歯周ポケットが深くなります。
【6mmぐらいまで進行】
歯槽骨の溶けが進み歯が動揺するようになってきます。歯ぐきも黒っぽくなってきます。
歯周ポケットから膿が出はじめ、口の中がネバネバし口臭がきつくなります。
この時点で出血や膿、口臭が自覚できるようになりまた、歯がぐらつき始めるので咬んだ時に痛みが出てきたり、歯根が露出することでしみたり、歯が浮いたような感じが出てきます。
④重度歯周病
歯を支えている歯周組織(歯ぐきや歯槽骨)が破壊され、骨の中で歯が浮いているような状態になります。歯周ポケットは根の先端に達するようになるほど深くなることがあります。
【6mm以上】
この時期になると持続的に出血と排膿を起こし歯はグラグラな状態になります。膿が歯ぐきの中にたまり大きく腫れあがることもあります。
歯がグラグラしているので咬めば噛むほど骨がダメージを受けます。やわらかいものも痛くて咬めなくなってしまいます。
口臭もかなり強くなり、マスクをしていても外に漏れるほどきつくなります。
最終的には自然に歯が抜け落ちてしまいます。
❸歯周病菌が増えるとどうなる
歯周病を悪くするのは歯周病菌です。歯周病菌は酸素が嫌いな『嫌気性グラム陰性菌』で歯周ポケットをどんどん深くして増殖していきます。ポケット内は歯周病菌にとって酸素がほとんどなくとても住みやすいのです。
なかでも最凶なのが『ポルフィロモナス・ジンジバリス』という歯周病菌です。これがタンネレラ菌とスピロヘータ(らせん状の菌)のトレポネーマ菌を従えるとさらに凶暴になります。これを『レットコンプレックス』といいます。
これらは約1000種類いるといわれている口腔内の細菌のほんの一部です。
これら歯周病菌は全身疾患とも深くかかわっていることが近年報告されています。
例えばジンジバリス菌は血管が詰まる動脈硬化に関与していたり、誤嚥性肺炎の原因菌ともいわれています。また脳内に感染すると炎症物質を放出しアミロイドβ(脳内のゴミ)が沈着し、これがアミロイドβプラークとなり脳を委縮させるということまで解明されてきました。
このアミロイドβが脳内に溜まってアルツハイマー認知症を発症します。
このように今では口の中だけにいた歯周病菌が血管を通り心臓や脳にまで入り込んで心筋梗塞、脳梗塞や認知症を起こしていることまでわかるようになりました。
また糖尿病を悪化させ、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスと混合感染すると肺炎の重症化を引き起こすことも最近の研究で解明されてきました。
❹歯周病菌を減らすには
いいことが一つもない、歯周病菌をどうやって減らせばよいでしょう。
それは毎日のセルフケアと定期検診・メインテナンスの二つしかありません。どちらか一つというわけにはいきません。
毎日のセルフケアではデンタルプラーク【歯垢】をしっかり落としましょう。プラークは食べかすと違い、うがいだけでは取れません。歯ブラシを使っしっかり取りましょう。
歯ブラシだけでなく歯と歯の間には歯間ブラシやデンタルフロスを使いましょう。
特に夜の歯磨きに重点を置きましょう。あなたが寝ている間に歯周病菌は活発に動き回り増殖しています。寝ている間は起きているときに比べ唾液の量が極端に減ります。朝起きて口がくさかったりネバネバしてるる場合は要注意です。
定期検診では歯周病だけでなく虫歯のチェックも行いましょう。定期検診では歯周ポケットの深さを測定したり、歯石がたまっていないか、歯ぐきから膿や血が出ていないか、歯がグラグラしていないかをチェックします。唾液検査をして歯周病や虫歯のリスクを測定することもあります。レントゲン写真を撮り普段見えない骨の状態を観察します。虫歯がないか、詰め物と歯の間に隙間がないかなども合わせてチェックしていきます。
残念ながら歯周病や虫歯菌はゼロにはできません。ゼロにはならないが病気を引き起こさないレベルにまで減らすことはできます。
定期健診後は歯科医院で歯科衛生士によるプロケアや歯磨きがしにくいところやプラークがたまりやすいところのケアの仕方の説明を受けましょう。間違ったブラッシングの習慣や痛んだ歯ブラシを使わないようにしましょう。歯間ブラシやデンタルフロスもセルフケアに入れ習慣にしましょう。(面倒くさいかもしれませんが最初だけです。筋トレと同じです頑張りましょう)
この歯科医院で行う定期検診とメインテナンス、毎日ご自身で行うセルフケアの2本の柱で口腔内を清潔に保ち、悪い細菌の数を減らしていきましょう。
❺まとめ
今回は歯周病について議説明いたしました。いかがでしたでしょうか?
日本で歯を失う原因の1位が『歯周病』です。
歯周病は細菌による感染症です。その最近の塊がデンタルプラークです。初期の自覚症状がほとんどなく、何もせず放置しておけばゆっくりと着実に悪くなっていきます。
心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病の悪化や認知症、肺炎の重症化など、もはや口の中だけの病気ではなく、血管をめぐって全身にも悪影響を及ぼす怖い病気、それが歯周病です。
歯周病菌、虫歯菌は残念ながらゼロにはできません。だから定期検診とメインテナンスとご自身で行う毎日のセルフケアがとてもとても大切です。
怖い病気ですが食い止めることがちゃんとできます。もちろん今、歯周病ではない、あなたは予防もできます。
歯ブラシだけではなくデンタルフロスや歯間ブラシも始めましょう。
夜、寝る前の歯磨きが一番大事です。
自分に合った歯ブラシや歯間ブラシ、歯磨きの仕方をぜひ専門家である歯科衛生士に尋ねてみてください。
参考図書
「お口の中の悪いやつら」クインテットエッセンス出版株式会社
「脳の老化を止めたければ歯を守りなさい」かんき出版