あそこの歯医者は掃除をちゃんとやってくれない
こんにちは。豊田市にあります、だいせい歯科医院です。
今回はいつもと違い反省の意を込めてお話しさせていただきます。
グーグルのコメントに『ここの歯医者は掃除をしっかりやってくれない、高額な治療ばかりやたらすすめてくる。ここには2度と行かない』と厳しいコメントをいただきました。
クリーニングをせずに処置をすることはありませんが、コメントをくださった患者様には不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
目次
❶歯科医院での掃除の仕方について
歯科医院に初めてかかられると問診を記入していただき、問診表に基づきカウンセリングを行います。カウンセリングには患者様が何に困っていらっしゃるのか、今の状況がどうなったらよいと考えていらっしゃるのかなどをお聞きします。その後レントゲンを撮り歯周ポケットの検査をします。レントゲンでは虫歯、埋伏歯や根尖病変の有無や歯の植わっている骨(歯槽骨といいます)がとけていないか、歯石が深いところで固まっていないか、顎の関節の形に異常がないかなどを調べます。歯周ポケットの検査ではプローブという目盛りのついた細い道具を歯と歯茎の境目に挿入してポケットの深さや出血、排膿の有無などを調べます。
汚れのひどい部分や赤くはれて出血しているような炎症が強く疑われる場合はいきなり歯石を取る(スケーリングといいます。)ことは行わないことが多いです。炎症が強い部分のスケーリングはかえって状態を悪くしてしまうことがあります。出血がなかなか止まらなかったり、痛みがなかった歯茎や歯にスケーリング後に痛みが続くことがあります。
スケーリング自体は、歯石やプラークを除去するための一般的な歯科手技で、通常は安全ですが、口腔内に感染があったり、免疫が低下している場合、稀に細菌が血流に入り敗血症を引き起こすことがあります。特に免疫力の低下する糖尿病や心疾患を患っていらっしゃる方には注意が必要です。
そこでまずは表面のプラークを除去し歯肉の炎症を軽減させてからスケーリングを行います。この間に歯磨き指導を行わせていただくことにより毎日のセルフケアーをパワーアップしてもらうようにします。これは大人も子供もしっかりとおこないます。(TBI:Tooth Brushing Instruction)
TBIは日本語では『歯磨き指導』といわれますが、治療に入る前の治療でとても重要です。なぜなら今後のセルフケアが健康寿命を延ばすために欠かせないからです。
『あそこの歯医者は歯磨き指導ばっかりで全然治療してくれない』
『いつまでたっても治療が始まらない』
など見聞きすることがあります。
だいせい歯科医院でも
『いつになったら治療に入るのか?』
『毎回同じことの繰り返し、歯磨きはいいから早く治療して』
といわれることもあります。でもこれが治療の始まりなんです。セルフケアができてもらわないと治療が治療でなくなってしまうのです。
初診時の状態。
歯ぐきは腫れ、少し触ると出血します。歯石が盛り上がり歯ぐきからあふれてさらにその上にプラークが付着しています。この状態でスケーリングを行えばかなりなり出血してしまいます。
5カ月ほど頑張ってTBIをつづけていただき徐々に歯ぐきが良くなってきたのでスケーリングを行うことができました。
虫歯の原因は細菌です。歯周病の原因も細菌です。細菌を取るにはブラッシングをおいてほかにはありません。
(歯磨きをせずに飲み薬で虫歯や歯周病は治すことができません)
毎回同じことの繰り返しでうんざりしてしまうのは本当に心苦しいです。担当の衛生士も『患者様から早く治療をするように怒られて困っています』と申し送りがあります。
患者様、衛生士には申し訳ないと思いつつまだ歯肉が落ち着いていなかったりプラークの残りが多い場合は治療には入らずTBIを行ってもいらいます。 歯肉が落ち着いて出血もなくなり歯茎も赤くただれていない状態になったらスケーリングを行っています。歯石を超音波スケラーやエアスケラーという道具を使って歯石を砕いてとっていきます。歯石を取ったところはざらざらすることがあるので歯面を磨いていきます。すべての歯のスケーリングが終わったら日をあけて再度歯周ポケットの検査を行います。前回より良くなっているか、変化がないか、悪化してないかを評価します。歯周ポケットの深いところにたまっている歯石は部分的に麻酔をしてハンドスケラーで書き取っていきます。これが一連の歯科で行う掃除の大まかな流れです。
❷予防の意味を込めた保険外治療のご案内
TBIによりセルフケアもパワーアップしていただいたら今度こそ治療に入ります。治療には保険と保険外のものがあります。保険では国が認めた治療法材料を使用し日本全国、歯科医師の経験年数(歯科医師になりたての先生も、ベテランの先生も同じ)のにかわらず治療にかかる費用は同じです。
当医院が保険外の詰め物かぶせ物をご案内するには理由があります。それはちゃんとした治療はのちの予防につながると考えているからです。かぶせ物を銀歯ではなく、ジルコニアでご案内するのにはジルコニアクラウンの汚れにくい(撥水効果が高い)、傷がつきにくい、割れにくい、歯をたくさん削らなくて済む、銀歯よりも精度が高いなどの利点があるからで、決して押し付けているわけではありません。 銀歯のように酸化(さび)して黒くなるようなものが体に良いとは思いません。
(日本でも最近は奥歯でも金属を使わない強化プラスチックが使われるようになりましたが)
せっかく治療していただくのであれば、何度も治療しなくて済むような治療をご提供したいと思っています。
前歯の腫れがなかなか良くならないということで来院されました。
患者様からはこのかぶせ物は見た目も変だし…。とかぶせ物を外すと保存できない状態でした。
抜歯の必要性をご説明し、インプラントによる治療をご提案いたしました。同意をいただいて抜歯を行い創部が良くなってからインプラントを埋入しました。
現在は定期検診を欠かさず受けてくださっているので良い状態を維持できています。
患者様 | 60代女性 |
主訴 | 前歯の審美障害と歯肉からの出血と腫れ |
治療内容 | インプラント |
期間と回数 | 約10ヵ月・15回 |
費用 | 1,826,000円(税込) |
リスク | 手術に伴う腫れ出血、痛みが起こることがある。 術後インプラントが感染を起こすと抜けてしまう事かある。 咬む力によりインプラントが折れる事がある。 |
❸かぶせ物詰め物をする前に
ご説明した保険外の治療を行う前には口腔内全体の診査を行います。模型や写真を撮り治療が必要と考える部分を抽出し『治療計画立案書』を作製し治療内容、保険治療との違い治療期間、費用、保証についてご説明いたします。患者様から同意をいただいてから治療が始まります。
当然、ご納得いただける方ばかりではありませんので、他の医院で保険治療をご希望になられる患者様もいらっしゃいます。
❹長く安定した口腔内の環境を維持するお手伝い
治療にはとても長い期間がかかります。
もともと入っていた不良修復物を外し仮の歯に置き換えていきます。この間に虫歯が別の場所にできないように、歯ぐきが再度炎症を起こしてこないようにするためにプラークコントロールをしっかり行う必要があります。仮歯は特に汚れやすいため、まず治療はクリーニングから行います。クリニックで行うものはPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaningといいます)といい専用の機械を使ってクリーニングを行います。お家でも継続して口腔内のケアをしていただきたいので、磨き残しのある部分や、磨きにくい部分をマイクロスコープで撮影しどう磨いたら効率的かをご説明します。
(同じことを何度も繰り返してお伝えすることがありますがご了承ください)
最終的なかぶせ物がお口に入った後でも頻度こそ変わりますがPMTCを続けてもらい、お家でもお伝えしたブラッシングの方法でケアを続けていただきます。セラミックス系のかぶせ物は保険の金属やプラスチックとは違い歯に対する制度が高いため2次的な虫歯(かぶせ物のふちから虫歯ができる)や歯と歯茎の境目にプラークが付着しにくきなるので歯肉の炎症を起こしにくくなります。
かぶせ物の精度や材質が良くなることで虫歯や歯周病の予防効果を高めることができます。
しかしいくら良いかぶせ物でも天然歯にはかないません。セラミックスだからジルコニアだから歯を磨かなくていいわけではありません。かぶせ物と歯には継ぎ目ができます。この継ぎ目はしっかりとブラッシングする必要があります。
❺まとめ
歯ぐきの炎症が強い場合はまずは歯茎の炎症を軽減することを考えて表面の汚れを落とします。歯茎が悪い状態で歯石を取るとかえって炎症を強めてしまうことがあります。
セラミックスやジルコニアに代表されるかぶせ物をご提案するには理由があります。治療が必要と考える歯が多いとその分費用も時間もかかります。
保険外の治療は口腔内を悪くしないためのご提案で、しっかりと治療することが予防につながると考えています。
治療後は定期的なメンテナンスを欠かさず良い状態をいつまでも保ってほしいです。