かみ合わせの不具合は全身の不調の原因に
上の前歯が痛い、顎が痛い、どこで噛んでいいのかわからない、咬みにくいなど噛み合わせの不具合の症状は様々です。
例えば、上の前歯が痛いのは前歯が原因でないことがあります。
奥歯のかみ合わせが悪い(または奥歯がない)場合、必ずと言っていいほど真っ先にダメージを受けるのは上の前歯です。
奥歯のかみ合わせが悪いことで、下の歯が上の歯を突き上げトラブルを起こします。
なので奥歯から治療しなくてはなりません。
模型を作り、口腔内や顔貌写真を撮り、どこが原因なのかをしっかり診査診断してから治療を始めています。
奥歯は前歯を、前歯は奥歯を守っています
歯をまっすぐに噛みしめたとき、上下の前歯の間には隙間があります。
隙間がなく、常に歯が当たっているようだと、前歯の位置がずれて歯の寿命が短くなります。
奥歯の噛み合わせを調整することは、前歯が当たるのを防ぐ効果もあります。
奥歯のしっかりした咬み合わせが前歯を守るといっても過言ではありません。
奥歯は、横方向の動きに弱いです。
横方向の力が奥歯に伝わらないように前歯が機能します。
その代表格が犬歯です。
犬歯は歯の中で最も長く、横方向に動く力に耐えられる強い形をしています。
逆に犬歯が八重歯になっているなどで本来の機能を発揮できないと、奥歯の寿命が短くなる可能性があります。
噛み合わせが悪いと、全身の健康に悪影響を及ぼします
噛み合わせが悪いと顎関節症になったり、頭痛や肩こり、腰痛を引き起こし、体のあちこちに悪影響を及ぼすと言われています。
これは、悪い噛み合わせによって、頭や首の筋肉のバランスが崩れるためと考えられています。
筋肉のバランスが崩れると、顎がねじれ、頭が傾き、その傾きを補うために、体が肩や腰をひねってバランスをとろうとするからです。
マッサージやもみほぐしで局所の痛みを治療するのはもちろんですが、噛み合わせも非常に大事です。
逆に、噛み合わせが悪い原因は、身体の歪みや不調によって体全体のバランスが崩れているからかもしれません。
また、イライラしたり、歯ぎしりをするなど、自律神経系の乱れが見られることもあります。
噛むことは、人間の最も基本的な機能の一つです。
良い噛み合わせを保つことで、歯や口の中の健康だけでなく、体や心の健康も守ることができるのです。
噛み合わせが悪いと起こりやすい身体の異常
- 顎関節症
- 虫歯
- 歯周病
- 肩こり
- 頭痛
- 腰痛
- 耳鳴り
- 目のかすみ
- 身体の傾き
かみ合わせを改善するスプリント治療
顎が痛い場合やどこで噛んでいいかわからないなどの場合はまずスプリント(マウスピース)を装着してもらい、マウスピースを調整しながら適正な顎位を探していきます。
シリコンを使ってかみ合わせを何度も取り(最低5回)いま咬んでいる位置(咬頭嵌合位)と顎関節が一番無理なく回転する位置(中心位)を取りそのずれを調べます。
補綴治療が必要な場合はこの中心位で治療することが多いです。
この位置を調べるには咬合器、フェイスボウという機械が必要です。
咬合器は歯科技工士にとってはなくてはならない機材ですが、歯科医で咬合器をもっている、日常臨床で使用している先生は本当に少ないと思います。
ちゃんとした診査診断をしてちゃんと治療を受けていただきたいと思います。
咬合治療は今までと咬んだ感じが大きく変わります。
かみ合わせがなじむまではスプリントや、仮歯で治療をしなくてはなりませんので時間も費用も掛かってしまいます。
スプリント治療はこんな方におすすめです
• 顎(顎関節)に痛みや疲れを感じる方
• 顎の音がする方(顎関節症など)
• 睡眠時に歯ぎしりや食いしばりをする方
• 肩こりや頭痛のある方(効果がある場合もあります。)
- • スプリントの効果
- スプリントを口腔内に装着することで、顎関節にかかる力を軽減し、顎関節への負担を和らげることができます。
また、咬み合わせを正しい位置に誘導し、咬み合わせのバランスを整えます。
口元の筋肉のバランスを整え、体全体を安定させることができます。 - • スプリントの使用方法
- 基本的に毎日、寝る前に使っていただきます。
日中に歯ぎしりをする方は、日中にも使用するとより効果的です。
かみ合わせと顎関節症の密接な関係
噛み合わせが悪いから顎関節症になったと思っている方も多いようです。
たしかに噛み合わせと顎関節症は密接な関係があります。
殆どの場合、噛み合わせを改善すれば顎関節症も改善されます。
ただし、噛み合わせが悪くても、顎関節症にならない人はたくさんいます。
顎関節症は若い女性に多いことはよく知られていますが、噛み合わせが悪いのは若い女性に限ったことではありません。
年齢を重ねると、歯周病で歯を失ったり、歯を支える組織が弱くなり、噛み合わせに問題が生じることがあります。
顎関節症は噛み合わせの治療をすると良くなることがあることを考えると、噛み合わせは顎関節症の二次的な原因になっている可能性があります。
また、むし歯の治療や矯正治療が不適切な場合、後に顎関節症の引き金となる可能性も否定できません。
- 顎関節症になる原因
- 顎関節症は、様々な要因が重なって発症します。
例えば、「噛み合わせの悪さ」「生活習慣」「ストレス」「姿勢の悪さ」などです。
そのため、検査・診断の後、最も可能性の高い原因から解決していきます。
- 高度な機器による顎関節症の多角的な解析
- 顎関節症を引き起こす要因はさまざまで、決定的な治療法があるわけではありません。
そのため、一般的な歯科医院だと診断や治療は「経験と勘」に頼ることが多いのが現状です。
しかし、当院では経験に頼るだけでなく、CTやレントゲンなどの機器を駆使し、正確な診断のもと治療を行っています。
その結果、患者さん一人ひとりに合わせた診断と治療が可能になります。
- 顎の構造の3次元解析「CT」
- CTは、3次元の画像を撮影する装置です。
これにより、一般的に使用されている二次元のレントゲンよりも、より詳細な状態の検査が可能になりました。
顎関節症の原因が咬合にある場合、特にCTが有効です。
- 正しいかみ合わせの位置を決めるフェイスボウ
- フェイスボウという噛み合わせ器を使って、体の中心軸に対する歯の位置を記録します。
フェイスボウは、鼻の下のポイントを基準にフェイスボウの移動ができるため、歯に対する頭蓋中軸の位置を正確に記録することができます。
上顎と下顎の石膏模型は、それぞれの顎の状態を忠実に再現していますが、このフェイスボウを使って上顎と下顎の関係(不正咬合など)を記録しているのです。
フェイスボウ
当院では正しい咬み合わせを作るために、「フェイスボウ」を使用し、上顎に対する患者様の顎関節の位置を再現し、調整していきます。
顎関節は他の関節と異なり、非常に複雑な動きをしています。
可能な限り患者様の口腔内に合わせた補綴物を製作し、顎への負担を軽減し、調整を可能にするために咬合器を使用します。
臨床上問題が生じないレベルまで噛み合わせを調整することで、顎運動の再現精度を向上させることが可能なのです。
青いシリコン(シリコンバイト)が6個並んで咬合器と写っているのは噛み合わせを5回中心位(顎関節を規準にした噛み合わせで歯は関係ありません=治療咬合)でとり、任意にマウントしてもらうシリコンバイトを決めマウント(上顎の模型と下顎の模型の間に噛ませて模型をセット)します。
取ったシリコンバイトを入れ替えてシリコンバイトがしっかり隙間なく噛んでいるかを全部調べます。
その後咬頭嵌合位(普段何も考えずに噛んでいる位置=歯牙位)と中心位がずれているかいないかを確認します。
この咬合診査をするのに上顎の位置がわからないと咬合器に付けられないのでフェイスボウを使って上顎の位置を決めています。
顎関節症治療の流れ
治療は以下のように行われます。
- カウンセリング、問診
- 口腔内検査、あご周りの筋肉の検査(首や背中などの筋肉も)
- 写真撮影
- 歯型と噛み合わせの採取
- CT、レントゲン
- 全データの解析
- 診断結果のご説明
- 治療開始
治療内容は一人ひとり違いますが、
• 口を開ける運動
• 筋肉のストレッチ運動
• 咀嚼筋マッサージ
• 悪習慣(食習慣、立ち方、座り方、寝方、食いしばり、歯ぎしりなど)の改善
• 咬み合わせ調整
• スプリント治療
• 被せ物治療
• 矯正治療
を組み合わせて行います。
噛み合わせは早め早めの改善が吉
顎関節症だと自覚していない人でも、検査を受けると約6~7割の人に何らかの噛み合わせの異常が見られます。
間違いなく顎関節症の予備軍です。
顎関節症の悪い癖として、噛み合わせが悪い、頬杖をつく、うつぶせで寝る、長時間口を大きく開ける、硬いものを常食するなどがあります。
これらはすべて、顎関節に直接強い負荷がかかるものです。長寿と快適な食生活のために、顎関節のお手入れをしてほしいです。
顎関節症は経過が長いほど治りにくい病気です。
最近顎が変だなとか痛いときがあるなというときはなるべく早めに受診されることをお勧めします。